足首をひねった、スポーツ中にふくらはぎを痛めた、太ももの裏に急激な痛みが走った、転倒して手首や膝を負傷した――このような急性外傷の初期対応として、以前は「RICE処置」という言葉が広く使用されていました。
RICEは、
- Rest:安静
- Ice:冷却
- Compression:圧迫
- Elevation:挙上
の頭文字です。
しかし、スポーツ医学・リハビリテーション領域では、単純に「安静にして動かさない」ことだけを重視するのではなく、損傷した組織の状態を考慮しながら、適切なタイミングで適切な負荷を与えることが重視されるようになりました。
そこで提唱された考え方の一つがPOLICEです。
POLICEは、
- Protection:保護
- Optimal Loading:最適負荷
- Ice:冷却
- Compression:圧迫
- Elevation:挙上
を意味します。
最大のポイントは「RICEのRest(安静)」が、そのまま「何もしないこと」を意味するのではなく、**Optimal Loading(損傷組織の許容量に応じた最適な負荷)**という考え方へ置き換えられていることです。
急性の足関節捻挫や肉離れでは、損傷直後に過度な負荷をかければ損傷を拡大させる可能性があります。一方、必要以上に長期間動かさなければ、関節可動域低下、筋力低下、組織適応の遅れなどにつながる可能性があります。
英国スポーツ医学系のレビューでも、健康な競技者・負傷した競技者の双方について、組織容量を大きく超える負荷は損傷リスクを高める一方、適切に進められたスポーツ特異的な負荷は身体能力・組織能力の向上につながると整理されています。
本記事では、捻挫、肉離れ、打撲、スポーツ障害、腰痛などを含め、急性外傷の直後から競技復帰までを「保護→評価→最適負荷→機能回復」という流れで考えます。
- 1.POLICE処置とは何か|RICE処置からOptimal Loadingへ
- 2.捻挫・肉離れの発生メカニズム|靭帯・筋・腱・関節を解剖学的に理解する
- 3.POLICEの各要素を具体的に理解する
- 4.なぜ「安静」より「最適負荷」が重要なのか|組織適応と運動機能
- 5.急性外傷後の「最適負荷」を決める評価項目
- 6.理学的評価で見逃してはいけない骨折・重症損傷
- 7.整形外科と整骨院・鍼灸院の役割の違い
- 8.当院におけるPOLICEから競技復帰までの考え方
- 9.骨盤矯正・骨格矯正は急性外傷にどう関係するのか
- 10.筋膜リリース・整体施術・鍼灸をOptimal Loadingと組み合わせる考え方
- 11.EMS治療とOptimal Loading
- 12.急性外傷から競技復帰までの段階別分類
- 13.腰痛・骨盤・下肢の連動も確認する必要がある
- 14.高槻市・茨木市で捻挫・肉離れ・スポーツ障害の改善を考える方へ
- 15.POLICE処置に関するよくある質問
- 16.まとめ|POLICEの本質は「安静」から「適切な負荷管理」への転換
1.POLICE処置とは何か|RICE処置からOptimal Loadingへ
RICE処置の基本
従来のRICEは、急性軟部組織損傷に対する初期対応として長期間知られてきました。
特に、
- 捻挫
- 打撲
- 肉離れ
- 筋損傷
- 靭帯損傷
- 軽度の軟部組織損傷
などに対し、受傷直後の疼痛や腫脹を管理する考え方として使用されてきました。
しかし「Rest=安静」を長期間続けることには問題があります。
過度な不動化によって、
- 筋力低下
- 関節可動域低下
- 筋・腱組織の容量低下
- 身体活動量低下
- 固有感覚の低下
- 運動パターンの変化
などが生じる可能性があるためです。
そのため、現代のスポーツリハビリテーションでは「完全に休ませ続ける」のではなく、損傷部位を保護しながら、組織が耐えられる範囲で負荷を再導入することが重要になります。
POLICEの5要素
| 項目 | 英語 | 意味 | 主な目的 |
|---|---|---|---|
| P | Protection | 保護 | 追加損傷を防ぐ |
| O | Optimal Loading | 最適負荷 | 組織適応・機能回復を促す |
| I | Ice | 冷却 | 疼痛・局所症状の管理 |
| C | Compression | 圧迫 | 腫脹管理を補助 |
| E | Elevation | 挙上 | 腫脹管理を補助 |
POLICEの中心概念は「O」、つまりOptimal Loadingです。
Optimal Loadingとは何か
Optimal Loadingは「できるだけ早く強く動かす」という意味ではありません。
重要なのは、
損傷組織の耐容量 < かける負荷
となれば過負荷となり得る一方、
損傷組織の耐容量 ≫ かける負荷
という状態を長期間続けても、必要な組織適応が得られない可能性があるということです。
したがって、
現在の組織容量に対して適切な負荷を設定し、反応を確認しながら段階的に増やす
ことがOptimal Loadingの基本的な考え方です。
急性軟部組織損傷についても、保護の後に適切な負荷を段階的に導入することが重要とされています。
2.捻挫・肉離れの発生メカニズム|靭帯・筋・腱・関節を解剖学的に理解する
POLICEを正しく理解するためには、何が損傷しているのかを把握する必要があります。
足関節捻挫
スポーツ現場で頻度の高い外傷の一つが足関節捻挫です。
代表的なのは、足関節を内側へひねる内反捻挫です。
主に問題となりやすい外側靭帯には、
- 前距腓靭帯(ATFL)
- 踵腓靭帯(CFL)
- 後距腓靭帯(PTFL)
があります。
特に前距腓靭帯は足関節捻挫で損傷することが多い靭帯です。
受傷時には、
- 靭帯線維への伸張
- 部分断裂
- 完全断裂
- 関節包の損傷
- 滑膜反応
- 出血
- 浮腫
- 疼痛
などが生じる場合があります。
さらに、受傷後には足関節周囲の固有感覚や神経筋制御が低下することがあり、単純に「腫れが引いた=治った」と判断することはできません。
肉離れ
肉離れは筋線維または筋腱移行部などに急激な張力が加わることによって発生します。
代表的な部位として、
- ハムストリングス
- 腓腹筋
- 大腿四頭筋
- 内転筋群
などがあります。
肉離れでは、筋収縮と筋伸張が同時に要求される場面、特に高速度走、急加速、急減速、ジャンプ、キックなどで強い負荷がかかります。
ハムストリング損傷の国際コンセンサスでは、受傷初期は高いひずみや高いひずみ速度を伴う負荷を避けつつ、その後は組織の容量と症状を確認しながら段階的に負荷を増やし、最終的には競技で要求される走行・スプリント能力まで戻していくことが推奨されています。
打撲
打撲では、
- 筋挫傷
- 皮下組織損傷
- 血腫
- 局所浮腫
などが発生します。
強い打撲の場合には筋内血腫や骨損傷などが隠れている場合もあるため、「打撲だから大丈夫」と自己判断することは危険です。
3.POLICEの各要素を具体的に理解する
Protection:保護
最初に重要なのは、損傷部位を追加損傷から保護することです。
例えば足関節捻挫なら、
- 競技中止
- 不要な歩行を減らす
- サポーター
- テーピング
- 松葉杖などによる荷重調整
を状態に応じて検討します。
ここで注意するべきなのは、「保護」と「完全固定」は同じではないということです。
骨折などでは医師による評価を踏まえて固定が必要になる場合があります。一方、軽症の軟部組織損傷であれば、必要以上の不動化を長期間続けることが望ましいとは限りません。
Optimal Loading:最適負荷
POLICEの中核です。
例えば足関節捻挫の場合、
初期
- 痛みを増やす荷重を避ける
- 安全な範囲で関節を動かす
- 歩行量を調整する
中期
- 可動域訓練
- 等尺性運動
- 軽度の筋力トレーニング
- バランストレーニング
後期
- 片脚立位
- カーフレイズ
- スクワット
- ランジ
- ジャンプ
- ランニング
- 切り返し
- 競技特異的動作
というように、必要な能力に応じて負荷を段階化します。
ハムストリング損傷の国際的コンセンサスでも、リハビリテーションは単純な経過日数ではなく、症状、筋力、過去の負荷への反応、競技要求などを基準に個別化することが重視されています。
Ice:冷却
アイシングは急性期の疼痛管理などを目的に使用されることがあります。
ただし、「冷やせば治りが早くなる」と単純化することはできません。
冷却は主として症状管理の手段であり、損傷組織の治癒そのものを保証するものではありません。
また、
- 長時間の冷却
- 低温刺激
- 皮膚障害
- 循環障害
などにも注意が必要です。
「冷やすこと」だけを急性外傷治療の中心にしないことがPOLICEの考え方を理解する上で重要です。
Compression:圧迫
弾性包帯やサポーターなどによる圧迫は、浮腫や腫脹の管理を補助する目的で使用されます。
ただし、
- しびれ
- 皮膚色の変化
- 強い痛み
- 冷感
などが生じた場合には圧迫が強すぎる可能性があります。
Elevation:挙上
患部を心臓より高い位置へ挙上することは、浮腫管理の補助的手段となります。
特に足関節捻挫など下肢の外傷では、受傷後の腫脹管理として利用されます。
4.なぜ「安静」より「最適負荷」が重要なのか|組織適応と運動機能
組織は適切な負荷に適応する
筋、腱、靭帯、骨などの運動器組織は、力学的刺激に応答して適応します。
そのため、受傷後のリハビリテーションでは、
負荷が少なすぎること
と
負荷が大きすぎること
の両方を避ける必要があります。
スポーツ医学では、局所組織の容量を超える負荷がかかれば損傷リスクが増加する一方、適切なトレーニング負荷によって組織・身体能力を向上させるという考え方が示されています。
「痛みゼロまで完全安静」という考え方の問題
以前は「痛みがあるなら完全に休む」という対応が一般的でした。
しかし、競技復帰を考える場合、必要なのは「痛くないこと」だけではありません。
例えばサッカー選手なら、
- ジョギング
- 加速
- 減速
- キック
- 切り返し
- スプリント
- 片脚着地
までできなければ、本当の意味で競技復帰したとは言いにくいでしょう。
ハムストリング損傷の国際コンセンサスでも、競技復帰の最終目標を試合中に必要な能力と結びつけ、段階的に走行・スプリントまで負荷を進めることが重視されています。
つまり、
痛みがなくなること=完全復帰
ではなく、
競技に必要な負荷を安全に受けられる能力=復帰に必要な重要条件
と考える必要があります。
5.急性外傷後の「最適負荷」を決める評価項目
Optimal Loadingは、誰にでも同じ負荷を与えるものではありません。
疼痛評価
確認する項目には、
- 安静時痛
- 荷重痛
- 圧痛
- 伸張時痛
- 収縮時痛
- 動作時痛
- 翌日の疼痛
があります。
特に重要なのは「その場で痛くないか」だけではありません。
運動後数時間から翌日に、
- 腫脹が増えた
- 熱感が増えた
- 歩行が悪化した
- 可動域が低下した
- 疼痛が増した
のであれば、前回の負荷が現在の組織容量を上回っていた可能性を考えます。
腫脹
足関節捻挫の場合、
- 外果周辺の腫脹
- 内果周辺の腫脹
- 足背の腫脹
- 皮下出血
などを確認します。
腫脹の程度だけで重症度を確定することはできませんが、経過観察には重要な情報です。
関節可動域
足関節では特に、
- 背屈
- 底屈
- 内反
- 外反
を確認します。
受傷直後に可動域が制限されている場合、疼痛、腫脹、関節包、靭帯損傷、筋防御などが関係している可能性があります。
筋力
例えば足関節捻挫後なら、
- 足関節背屈筋群
- 底屈筋群
- 内反筋群
- 外反筋群
の機能を確認します。
肉離れでは、損傷筋の等尺性収縮、短縮位・伸張位での筋出力、左右差、競技特異的な力発揮能力などを段階的に確認します。
6.理学的評価で見逃してはいけない骨折・重症損傷
「捻挫だと思っていたら骨折だった」というケースは臨床上重要です。
特に足関節外傷では、Ottawa Ankle Rulesのような臨床的意思決定ルールが画像検査の必要性を判断する際に利用されています。
米国放射線学会の基準では、例えば急性足関節外傷で、
- 脛骨・腓骨遠位部の特定部位に圧痛がある
- 距骨や踵骨に圧痛がある
- 受傷直後に荷重できなかった
- 医療機関で4歩歩けない
などの条件が画像評価を検討する重要な要素になっています。
ただし、Ottawa Ankle Rulesはあらゆる患者・あらゆる外傷に適用できる万能な診断基準ではありません。
整形外科での評価を優先すべき代表例
| 状態 | 推奨される対応 |
|---|---|
| 強い外傷機転 | 医療機関で評価 |
| 明らかな変形 | 緊急評価 |
| 荷重困難 | 骨折等を鑑別 |
| 強い腫脹 | 重症損傷を鑑別 |
| 骨性圧痛 | 骨折評価 |
| しびれ・感覚障害 | 神経障害を評価 |
| 明らかな筋力低下 | 神経・筋腱損傷を評価 |
| 発熱・全身症状 | 感染等を鑑別 |
| 疼痛が時間とともに悪化 | 再評価 |
| 長期間改善しない | 医療機関含めて再評価 |
7.整形外科と整骨院・鍼灸院の役割の違い
整形外科で行われること
整形外科は医師が診察し、必要に応じて、
- X線
- MRI
- CT
- 超音波検査
- 神経学的評価
- 血液検査
- 投薬
- 注射
- 手術
- 医学的リハビリテーション
などを行う医療機関です。
骨折、重度靭帯損傷、腱断裂、神経障害などが疑われる場合には、医療機関による評価が優先されます。
柔道整復師が担う領域
厚生労働省は、柔道整復師による施術について、整骨院・接骨院で骨折、脱臼、打撲、捻挫、いわゆる肉離れを含む損傷に対する施術が療養費の対象となり得ることを示しています。骨折・脱臼については、緊急の場合を除き、あらかじめ医師の同意が必要です。
また、柔道整復師法では、柔道整復師が外科手術や薬品の投与等を行うことは禁止され、骨折・脱臼への施術については医師の同意に関する制限が定められています。
つまり、整骨院では医療機関の画像診断や投薬を代替するのではなく、適切な範囲で、
- 問診
- 視診
- 触診
- 可動域評価
- 筋力評価
- 動作評価
- 損傷後の機能回復
- 運動療法
- 固定・保護
- 競技復帰支援
などを行うことが重要になります。
8.当院におけるPOLICEから競技復帰までの考え方
茨木市あゆみ鍼灸整骨院では、急性外傷について単純に「痛い場所を揉む」「すぐに強く矯正する」という方法は採用せず、損傷状態と負荷許容量を考慮した評価を行います。
12年以上の臨床経験を基礎に、症状部位だけではなく、運動連鎖、関節可動性、筋活動、姿勢、動作などを含めて確認します。
STEP1:損傷部位の確認
- 受傷機転
- 疼痛部位
- 腫脹
- 圧痛
- 可動域
- 荷重
- 筋力
- 神経症状
などを確認します。
STEP2:医療機関への紹介が必要か判断
骨折などの可能性がある場合には、無理に施術を進めず、整形外科などでの評価を優先します。
STEP3:保護
必要に応じて、
- テーピング
- サポーター
- 荷重量調整
- 日常生活上の注意
などを検討します。
STEP4:Optimal Loading
疼痛や腫脹を確認しながら、
- 関節可動域運動
- 等尺性筋収縮
- 軽度筋力訓練
- バランス訓練
- 荷重訓練
へ進めます。
STEP5:運動連鎖の評価
足関節捻挫の場合でも、患部だけではなく、
足部 → 足関節 → 膝 → 股関節 → 骨盤 → 体幹
の連鎖を確認します。
肉離れでも、
足部 → 下肢 → 骨盤 → 体幹
の力学的連鎖を評価することが重要です。
ハムストリング損傷についても国際コンセンサスでは、局所の筋だけでなく、下肢全体のキネティックチェーンに関係する機能障害を考慮することが重視されています。
9.骨盤矯正・骨格矯正は急性外傷にどう関係するのか
「捻挫をしたので骨盤矯正をすれば治る」というような単純な考え方は適切ではありません。
急性期ではまず、
損傷組織の保護
骨折等の鑑別
疼痛・腫脹管理
適切な荷重
が優先されます。
その後、回復期に入ってから、
- 足関節の可動性
- 股関節の可動性
- 骨盤運動
- 体幹安定性
- 片脚支持
- 神経筋協調性
- 左右差
- 競技動作
などを評価していきます。
骨盤矯正・骨格矯正の位置づけ
当院では、無理に姿勢を「正しい形」に固定することを目的とせず、骨格矯正をベースにした根本アプローチを行っています。
ここでいう骨格矯正は、骨を永久的に物理移動させることを意味するものではありません。
関節可動性、筋緊張、姿勢制御、荷重パターン、運動連鎖などを確認し、身体を動かしやすい状態へ導くための徒手的・機能的アプローチとして考えます。
急性捻挫の直後に強い矯正刺激を加えるのではなく、損傷段階に応じて刺激量を調整することが重要です。
10.筋膜リリース・整体施術・鍼灸をOptimal Loadingと組み合わせる考え方
POLICEは「手技を禁止する理論」ではありません。
重要なのは、損傷段階に対して適切かどうかです。
筋膜リリース
筋膜への徒手的アプローチは、
- 筋緊張
- 軟部組織の滑走性
- 関節運動
- 身体感覚
などを考慮しながら行います。
ただし、急性期の損傷組織を強く圧迫することが常に適切とは限りません。
整体施術
整体施術についても、急性外傷の場合は「痛みの原因を全部一度で取り除く」という考え方ではなく、損傷部位の保護と機能回復を優先することが重要です。
鍼灸
鍼灸についても、急性外傷のすべてに対して同じ施術を行うものではありません。
疼痛、筋緊張、周辺部位の機能低下などを確認し、補助的なコンディショニングとして利用します。
円皮鍼
強い刺激が苦手な方には、円皮鍼(えんぴしん)を選択肢として提案する場合があります。
円皮鍼は長時間貼付して局所への比較的低刺激な入力を維持するタイプの鍼具です。
ただし、円皮鍼によって靭帯断裂や筋線維損傷そのものが修復されるという意味ではありません。
また、出血・感染・皮膚トラブル等のリスクも考慮する必要があります。
11.EMS治療とOptimal Loading
EMS治療(Electrical Muscle Stimulation)は、電気刺激によって筋収縮を誘発する方法です。
スポーツリハビリテーションでは、
- 筋活動の補助
- 筋力維持・回復の補助
- 筋収縮感覚
- 運動再学習の補助
などを目的として使用されることがあります。
ただし、急性期に「筋肉を鍛えれば早く治る」と考えて強いEMSを行えばよいわけではありません。
筋損傷の程度、疼痛、収縮能力、組織の治癒段階を考慮する必要があります。
ハムストリング損傷の国際コンセンサスでも、筋刺激などの補助手段は臨床現場で使用されている一方、その最適な使用方法については研究上の不確実性が残されています。
したがってEMS治療は、Optimal Loadingを補助する方法として位置付けるのが適切です。
12.急性外傷から競技復帰までの段階別分類
Phase 1:保護・症状管理期
主な目的:
- 追加損傷防止
- 疼痛管理
- 腫脹管理
- 安全性確認
代表的対応:
- Protection
- Compression
- Elevation
- 必要に応じたIce
- 荷重調整
Phase 2:早期機能回復期
主な目的:
- 関節可動域回復
- 筋活動回復
- 循環・活動性維持
- 徐々に荷重
代表的対応:
- 軽度ROM運動
- 等尺性収縮
- 軽度荷重
- バランストレーニング
Phase 3:筋力・協調性回復期
主な目的:
- 筋力
- 神経筋協調性
- 固有感覚
- 関節安定性
代表的対応:
- レジスタンストレーニング
- 片脚トレーニング
- スクワット
- ランジ
- カーフレイズ
- バランス訓練
Phase 4:競技復帰準備期
主な目的:
- 競技特異的能力
- スピード
- パワー
- 切り返し
- ジャンプ
- 着地
代表的対応:
- ランニング
- 加速
- 減速
- スプリント
- ジャンプ
- 方向転換
- 競技動作
Phase 5:Return to Sport
最終的には、単に日常生活で痛くない状態ではなく、競技で必要な負荷を安全に受けられる状態を目指します。
ハムストリング損傷では特に、高速走行やスプリントまで段階的に戻すことが重要とされています。
13.腰痛・骨盤・下肢の連動も確認する必要がある
捻挫や肉離れを繰り返す競技者では、患部以外の機能も確認することが重要です。
例えば足関節捻挫を繰り返す選手では、
- 足部の接地
- 足関節背屈
- 膝のアライメント
- 股関節外転・回旋
- 骨盤の安定性
- 体幹制御
などを評価します。
また、下肢の機能低下が腰部の運動パターンに影響する場合もあります。
腰痛が併存する場合には、
足部 → 足関節 → 膝 → 股関節 → 骨盤 → 腰椎
というキネティックチェーンを総合的に評価する必要があります。
ただし、骨盤の傾きや左右差を見つけたからといって、それが腰痛や捻挫の原因だと直ちに断定できるわけではありません。
静止姿勢、動作、筋力、疼痛、既往歴、競技負荷を組み合わせて評価することが重要です。
14.高槻市・茨木市で捻挫・肉離れ・スポーツ障害の改善を考える方へ
高槻市、茨木市周辺には、学校部活動、クラブチーム、社会人スポーツ、ランニング、サッカー、野球、バスケットボール、バレーボール、テニス、ゴルフ、格闘技、フィットネスなど、さまざまなスポーツ環境があります。
競技者の外傷では、「受傷直後の対応」と「競技復帰後の再発予防」を分けて考えることが重要です。
例えば、
- 練習中に足首をひねった
- 試合中にふくらはぎを痛めた
- ダッシュ中にハムストリングスに痛みが出た
- ジャンプ着地で膝周囲を痛めた
- 長距離走後から腰痛が発生した
といった場合、初期の疼痛管理だけで終わるのではなく、回復段階に応じて負荷を戻していく必要があります。
茨木市あゆみ鍼灸整骨院では、大阪府茨木市園田町を拠点として、スポーツ外傷・スポーツ障害・慢性腰痛・筋肉の緊張などに対する運動器評価とコンディショニングを行っています。
高槻市方面から通院する競技者についても、練習日程、大会日、移動時間、学校・仕事、デスクワークなどの日常負荷を考慮しながら、身体状態に応じた施術・運動管理を考えることが重要です。
15.POLICE処置に関するよくある質問
Q1.RICEよりPOLICEの方が新しい考え方ですか?
はい。
POLICEは、RICEで重視されていた安静をそのまま継続するのではなく、**Optimal Loading(最適負荷)**を組み込んだ考え方です。
これは「早く動かせばよい」ということではなく、損傷組織を保護しながら、その組織が許容できる範囲で段階的に負荷を戻すという考え方です。
Q2.捻挫したらすぐ歩いた方がいいですか?
必ずしもそうではありません。
損傷程度によって必要な保護・荷重制限は異なります。
強い疼痛、著明な腫脹、骨性圧痛、変形、荷重困難などがあれば、骨折や重度損傷を鑑別する必要があります。足関節外傷ではOttawa Ankle Rulesなどが画像検査の判断に利用されています。
Q3.肉離れは完全に痛みがなくなるまで運動してはいけませんか?
一律に「完全安静」とする必要はありません。
肉離れでは損傷程度と組織の治癒段階を考慮し、適切な強度で段階的に負荷を戻すことが重要です。
ハムストリング損傷では、初期に高いひずみ負荷を避け、その後、筋力・症状・過去の負荷への反応を確認しながら、最終的にランニングやスプリントまで進めることが推奨されています。
Q4.捻挫直後に骨盤矯正や骨格矯正を受けてもいいですか?
急性外傷直後は、まず損傷部位の評価と保護が優先されます。
骨折、重度靭帯損傷、脱臼などが疑われる場合には医療機関での診察が必要です。
損傷が落ち着いた後は、足関節だけでなく股関節、骨盤、体幹などを含めた運動連鎖を確認し、必要な範囲で徒手的アプローチや運動療法を組み合わせることがあります。
Q5.急性の捻挫に鍼灸や円皮鍼は使えますか?
状態によって補助的に検討される場合があります。
ただし、円皮鍼は靭帯断裂や骨折そのものを診断・修復する治療ではありません。
また、急性期の損傷部位へ刺激を加えることが適切かどうかは、損傷の程度、出血、腫脹、皮膚状態、感染リスク等によって判断する必要があります。
当院では強い刺激が苦手な方に対して、必要に応じて円皮鍼を用いた低刺激の鍼灸アプローチを検討します。
Q6.EMS治療は肉離れ直後からできますか?
一律には決められません。
筋損傷の状態、疼痛、筋収縮能力、損傷部位、受傷時期などを評価して判断します。
EMS治療は筋活動を補助する手段ですが、急性期に高強度で使用すればよいというものではありません。
Optimal Loadingの考え方に沿って、現在の組織容量と回復段階に応じて刺激量を調整する必要があります。
16.まとめ|POLICEの本質は「安静」から「適切な負荷管理」への転換
捻挫や肉離れなどの急性軟部組織損傷では、昔からRICE処置が広く知られてきました。
しかし、現在のスポーツリハビリテーションで重要なのは、単純に「動かさないこと」ではありません。
POLICEが示す、
Protection=保護
Optimal Loading=最適負荷
Ice=冷却
Compression=圧迫
Elevation=挙上
という考え方では、特にOptimal Loadingが重要な概念になります。
損傷した組織には、休ませるべきタイミングと、動かすべきタイミングがあります。
その判断は、
- 疼痛
- 腫脹
- 圧痛
- 関節可動域
- 筋力
- 荷重能力
- 神経症状
- 動作
- 前回負荷への反応
- 競技特性
- 損傷組織の種類
- 治癒段階
などを組み合わせて考えます。
スポーツ復帰では、「日常生活で痛くない」だけでは不十分な場合があります。
サッカーならスプリントや切り返し、野球なら投球・走塁、バスケットボールならジャンプ・着地、テニスなら急停止と方向転換など、実際の競技で必要とされる負荷まで段階的に戻すことが重要です。ハムストリング損傷についても、国際的な専門家コンセンサスはスポーツ特異的な要求を基準にした個別的なリハビリテーションを重視しています。
また、柔道整復師が対応できる外傷と、整形外科での診察・画像検査を優先すべき状態を区別することも不可欠です。
厚生労働省によれば、整骨院・接骨院では骨折、脱臼、打撲、捻挫、肉離れなどが一定の条件で施術対象となりますが、骨折・脱臼については緊急時を除き医師の同意が必要です。
茨木市あゆみ鍼灸整骨院では、12年以上の臨床経験を基礎として、急性外傷に対して損傷部位だけを確認するのではなく、関節可動域、筋力、姿勢、運動連鎖、荷重能力などを評価します。
無理な姿勢矯正を強要せず、骨格矯正をベースにした根本アプローチを基本として、損傷段階や身体状態に合わせた施術と機能回復を検討します。
必要に応じて、
- 柔道整復術
- 徒手的アプローチ
- 整体施術
- 筋膜リリース
- 運動療法
- 骨盤矯正
- 骨格矯正
- 鍼灸
- 円皮鍼
- EMS治療
などを組み合わせます。
鍼灸については、強い刺激が苦手な方に対して円皮鍼(えんぴしん)を選択肢として提案します。ただし、円皮鍼や鍼灸は損傷組織を機械的に修復するものではなく、疼痛や筋緊張などに対する補助的なコンディショニング手段として位置づける必要があります。
急性捻挫、肉離れ、打撲、スポーツ障害、腰痛などでは、「痛いから完全安静」でも「早く動けば治る」でもなく、現在の組織容量に合ったOptimal Loadingを設定することが重要です。
高槻市・茨木市周辺でスポーツ外傷、捻挫、肉離れ、腰痛、筋肉の緊張、競技復帰、骨盤矯正、骨格矯正、鍼灸、EMS治療などの改善を検討する場合も、受傷直後の保護から競技復帰までを一つの連続したプロセスとして捉えることが重要です。
強い腫脹、著明な変形、荷重困難、骨性圧痛、しびれ、筋力低下、発熱、強い外傷、症状の急速な悪化などがある場合は、施術よりも整形外科などの医療機関による評価を優先してください。

