「腰痛が続いているけれど、薬だけには頼りたくない」
「肩こりが強く、手技を受けても痛みが戻ってしまう」
「電気治療は本当に痛みを抑える仕組みがあるのか知りたい」
「EMS治療とTENSは何が違うのか分からない」
整骨院や鍼灸院で用いられる電気刺激療法に、このような疑問を持つ方は少なくありません。
その中でも**TENS(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation:経皮的電気神経刺激療法)**は、皮膚表面に電極を貼付し、末梢神経へ電気刺激を与えることで疼痛を調整する方法です。
TENSの古典的な説明として有名なのが、1965年にMelzackとWallによって提唱されたゲートコントロール理論(Gate Control Theory)です。この理論では、痛みを伝える細い線維からの入力に対し、触覚などを伝える太い有髄線維、特にAβ線維からの入力が脊髄後角での侵害受容入力を抑制するという考え方が示されました。現在では、TENSの鎮痛作用はこの脊髄分節性抑制だけでは説明できず、下降性疼痛抑制系、中枢神経系、内因性オピオイド、GABA作動性・セロトニン作動性機構など、多数の経路が関与すると考えられています。 (PubMed Central (PMC))
したがって、
「TENSが痛みの信号を完全にブロックする」
という表現は、現在の神経生理学から見ると正確ではありません。
より正確には、
「Aβ線維などの非侵害性求心性入力を利用し、脊髄および脳幹を含む疼痛調節系によって、侵害受容情報の伝達・処理と痛みの知覚を抑制または変調する」
と理解する方が適切です。
この記事では、TENSのAβ線維刺激、脊髄後角、膠様質、ゲートコントロール、Aδ線維、C線維、侵害受容、下降性疼痛抑制、内因性オピオイドなどを解剖学・生理学の視点から詳しく解説します。
さらに、肩こり、腰痛、スポーツ障害などへの応用、EMS治療との違い、整骨院での位置づけ、安全性についても整理します。
- 1. TENSに関する専門的概要
- 1-2. TENSと低周波治療器
- 2-2. Aδ線維との違い
- 2-3. 神経線維の比較
- 3-1. 脊髄後角が「ゲート」となる
- 3-2. Aβ線維が増えると何が起こるのか
- 16-1. 比較表
- Q1. TENSはAβ線維を刺激しますか?
- Q2. ゲートコントロール理論とは何ですか?
- Q3. TENSは痛みの神経をブロックするのですか?
- Q4. TENSとEMS治療は同じですか?
- Q5. TENSは腰痛に効きますか?
- Q6. TENSは肩こりにも使えますか?
- Q7. TENSは筋肉を鍛えられますか?
- Q8. TENSは痛いほど強くした方が効きますか?
- Q9. ペースメーカーがあってもTENSを受けられますか?
- Q10. TENSを受けて痛みが減ったら、患部は治ったと考えてよいですか?
- Q11. TENSで痛みが取れなかった場合、神経痛ではありませんか?
- Q12. TENSと鍼灸を組み合わせることはできますか?
1. TENSに関する専門的概要
1-1. TENSとは何か
TENSは、
Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation
の略です。
日本語では、
経皮的電気神経刺激療法
または一般的に、
経皮的電気刺激
などと表現されます。
皮膚に電極を貼り、
皮膚 → 末梢神経 → 脊髄 → 中枢神経系
という求心性神経経路を電気刺激します。
日本の医療機器基準でも、低周波治療器にはTENSを含む経皮的な電気刺激装置が位置づけられており、疼痛や筋萎縮改善などを目的とする神経・筋刺激装置として整理されています。 (医薬品医療機器総合機構)
1-2. TENSと低周波治療器
臨床現場では、
低周波
電気治療
電気刺激療法
という言葉が使われます。
ただし、すべての低周波治療器が同じ目的・波形・周波数・電極配置で使用されるわけではありません。
例えば、
- 疼痛抑制を主目的とするTENS
- 筋収縮を起こすEMS
- 電気刺激による筋再教育
- 干渉波を利用する物理療法
- 鍼に電気刺激を加える電気鍼
などは、それぞれ目的や刺激対象が異なります。
2. Aβ線維とは何か
2-1. Aβ線維の特徴
Aβ線維は、
太い径
有髄
伝導速度が速い
という特徴を持つ感覚神経線維です。
主に、
触覚
圧覚
振動覚
などの非侵害性の感覚情報を中枢へ伝えます。
TENSでは、このAβ線維を含む大径求心性線維を刺激することが重要になります。 (PubMed Central (PMC))
2-2. Aδ線維との違い
Aδ線維はAβ線維より細く、
有髄
ですが伝導速度は遅くなります。
Aδ線維は、
鋭い痛み
などの比較的速い侵害受容情報を伝えます。
一方、
C線維
は無髄で伝導速度がさらに遅く、
鈍い痛み
灼熱感
などに関係します。
2-3. 神経線維の比較
| 神経線維 | 髄鞘 | 伝導速度 | 主な情報 |
|---|---|---|---|
| Aβ | 有髄 | 高速 | 触覚・圧覚・振動覚 |
| Aδ | 有髄 | 中程度 | 速い痛み・冷覚など |
| C | 無髄 | 低速 | 遅い痛み・温覚など |
この違いが、
ゲートコントロール
を理解する上で重要です。
3. ゲートコントロール理論とは
3-1. 脊髄後角が「ゲート」となる
脊髄には、
灰白質
があり、その後方部分が、
後角(dorsal horn)
です。
末梢から来た感覚情報は、この脊髄後角で処理されます。
ここには複数の神経回路が存在し、
触覚入力
侵害受容入力
などが相互作用します。
MelzackとWallのゲートコントロール理論では、脊髄後角における抑制性神経回路が「ゲート」のように機能し、痛みに関係する入力が上位中枢へ伝わる程度を調節すると考えられました。 (PubMed Central (PMC))
3-2. Aβ線維が増えると何が起こるのか
概念的には、
Aβ線維刺激
↓
脊髄後角の抑制性回路を活性化
↓
Aδ・C線維からの侵害受容入力を抑制
↓
上行性の痛覚情報処理を弱める
↓
痛みが低下する
というモデルで説明できます。
このため、
「ゲートを閉じる」
という表現が使われます。
ただし、これは実際に物理的な門が閉じるという意味ではありません。
4. 現代のTENS研究では「ゲート」だけでは説明しない
1965年のゲートコントロール理論は、疼痛生理学に大きな影響を与えました。
しかし現在では、
脊髄分節性抑制
だけでTENSの鎮痛作用すべてを説明することはできません。
研究では、
脳幹
下降性疼痛抑制系
内因性オピオイド
セロトニン
GABA
グリシン
などの関与も検討されています。 (PubMed Central (PMC))
したがって現在のTENSは、
末梢神経刺激によって、脊髄から脳までの疼痛調節ネットワークへ働きかける治療
と捉える方が適切です。
5. Aβ線維刺激による「痛覚伝達のブロック」の正しい理解
「ブロック」という言葉には注意が必要です。
TENSは、
痛みを伝える神経そのものを切断する
ものではありません。
また、
痛みの信号を100%遮断する
わけでもありません。
より正確には、
侵害受容入力の伝達効率・神経回路上の処理・中枢での痛みの認知を変化させる
方法です。
そのため、本記事では、
「痛覚伝達をブロックする」
というテーマを、
「脊髄後角などでの侵害受容情報の伝達を抑制・変調する」
という意味で説明します。
6. Aβ線維刺激から鎮痛までの経路
TENSを非常に単純化すると、
皮膚
↓
Aβ線維
↓
脊髄後角
↓
抑制性介在ニューロン
↓
侵害受容入力の抑制
という経路があります。
しかし、実際には、
脳幹
↓
下降性抑制系
↓
脊髄後角
という上位中枢からの調節も存在します。
7. 下降性疼痛抑制系とは
痛みは末梢から脳へ一方向に流れるだけではありません。
脳から脊髄へ向かって、
「この入力は抑えよう」
という調節も存在します。
このシステムを、
descending pain modulation
または
下降性疼痛調節系
と呼びます。
TENSによる鎮痛には、
末梢-脊髄の分節性機構
だけでなく、
脳幹からの下降性疼痛抑制
が関与することが示されています。 (PubMed Central (PMC))
8. 内因性オピオイドとの関係
TENSでは、
エンドルフィンなどの内因性オピオイド
が関与する可能性も研究されています。
このため、
高周波TENS
と
低周波TENS
では鎮痛作用に関係する神経化学的機構が異なる可能性があります。
ただし、
「低周波なら必ずオピオイド、高周波なら必ずゲート」
のように完全に二分するのは単純化しすぎです。
疼痛調節は複数の機構が重なっています。 (PubMed Central (PMC))
9. TENSの刺激強度
TENSでよく議論されるのが、
「どれくらいの強さで刺激するか」
です。
一般的な従来型TENSでは、
痛いほどの電気刺激
ではなく、
強いが不快ではない感覚レベル
を狙うことがあります。
これは、
Aβ線維などの感覚神経を十分に刺激する
という考え方と関連します。
10. 「ピリピリする」感覚には意味があるのか
TENSでは、
ピリピリ
振動するような感覚
が出ることがあります。
これは、
皮膚の感覚神経が刺激されている
結果です。
ただし、
痛いほど強くすればするほど効果が高い
とは限りません。
11. TENSと痛みの臨床効果
TENSについては研究量が非常に多い一方、
周波数
刺激強度
時間
電極配置
疾患
などが研究ごとに異なります。
そのため、研究結果は一様ではありません。
169件のレビューと49件のメタ解析を包括的に検討した2021年のレビューでは、TENSに有効性を示唆するレビューが69件、無効としたものが13件、結果が不明確だったものが87件でした。一方、一部のメタ解析では慢性筋骨格系疼痛などに対する疼痛強度低下が示されています。 (PubMed)
つまり、
TENSには鎮痛効果が期待できるが、すべての痛みに同じ程度の効果があるわけではない
というのが妥当です。
12. 慢性筋骨格系疼痛に対するTENS
2023年の系統的レビュー・メタ解析では、慢性筋骨格系疼痛と実験的疼痛に対するTENSの効果が検討され、58研究がレビュー対象、35研究がメタ解析に含まれました。疼痛強度や痛覚過敏などが評価されましたが、結果はアウトカムごとに異なり、TENSの効果を単一の機序・単一の数値で説明することは困難です。 (PubMed)
13. TENSと腰痛
腰痛は、
筋・筋膜性疼痛
椎間関節由来疼痛
椎間板関連疼痛
神経根症状
など、異なる病態を含む症候群です。
したがって、
「腰痛=TENS」
という考え方は適切ではありません。
慢性腰痛に対するTENSは長く研究されてきましたが、過去のCochraneレビューでは、当時の研究から十分に確実な有効性を示す証拠は乏しいと評価されていました。 (PubMed)
一方、より広いTENS研究全体では慢性筋骨格系疼痛への有益性が示される解析も存在します。 (PubMed)
この違いは、
「腰痛」という疾患単位
と
「慢性筋骨格系疼痛」という広いカテゴリー
を混同しないことが重要であることを示しています。
14. TENSと肩こり
肩こりでは、
僧帽筋
肩甲挙筋
後頭下筋群
などの筋緊張だけでなく、
姿勢
肩甲骨運動
頸椎
胸椎
睡眠
ストレス
など複数の因子が関係します。
TENSによって疼痛入力を抑制することは、
症状を一時的に軽減して動かしやすくする
という意味で補助的な価値を持つ場合があります。
ただし、
姿勢の問題
筋力低下
デスクワーク環境
などが原因として残っていれば、TENSだけで根本的に解決するとは限りません。
15. TENSとスポーツ障害
スポーツ障害では、
疼痛
によって、
筋出力
関節可動域
動作
が制限される場合があります。
このときTENSによる疼痛調整によって、
運動療法
を実施しやすくするという考え方があります。
つまり、
TENSそのものが治療のゴール
なのではなく、
TENS → 運動療法 → 機能回復
という位置づけです。
16. TENSとEMS治療の違い
これは整骨院でよく混同される部分です。
TENS
主に、
感覚神経
への電気刺激を利用して、
疼痛調節
を目的とします。
EMS
主に、
運動神経
を刺激して、
筋収縮
を誘発することを目的とします。
16-1. 比較表
| 項目 | TENS | EMS |
|---|---|---|
| 主対象 | 感覚神経 | 運動神経 |
| 主目的 | 疼痛調節 | 筋収縮・筋機能 |
| Aβ線維 | 重要 | 主目的ではない |
| 筋収縮 | 必須ではない | 基本的に起こす |
| 疼痛への直接的目的 | 強い | 補助的 |
| 筋力改善 | 主目的ではない | 主目的になり得る |
| 使用目的 | 鎮痛 | 筋再教育・筋力補助 |
17. TENSとEMSを併用できるのか
目的が異なるため、
TENS
+
EMS
という考え方は理論上成立します。
例えば、
TENS
↓
痛みの調整
↓
運動しやすくする
↓
EMS・運動療法
↓
筋機能を刺激
という組み合わせです。
しかし、
「TENSとEMSを一緒に使えば必ず効果が倍増する」
という根拠はありません。
18. TENSと徒手療法
TENSは、
筋膜リリース
関節モビライゼーション
マッサージ
などの徒手療法とは異なります。
TENSの主眼は、
神経生理学的な疼痛調節
です。
一方、
関節モビライゼーション
では関節運動、
マッサージ
では軟部組織、
など、それぞれターゲットが異なります。
19. TENSと矯正治療
矯正治療によって、
関節運動
姿勢
運動パターン
などへ介入し、
TENSによって、
疼痛
を調整するという組み合わせも考えられます。
例えば、
腰部痛
↓
TENSで疼痛を軽減
↓
股関節・体幹運動
↓
運動療法
という流れです。
20. TENSと鍼灸
鍼灸では、
鍼そのものの機械刺激
を利用できます。
さらに、
電気鍼
では鍼に電気刺激を加えます。
TENSと電気鍼は電気刺激を用いる点で共通しますが、
電極の位置
刺激方法
標的組織
が異なります。
21. 円皮鍼との違い
円皮鍼は、
皮膚・皮下への持続的刺激
を利用します。
一方、TENSは、
電気刺激
によって神経活動へ影響を与えます。
どちらも感覚入力を利用する可能性がありますが、
作用機序を同一視するべきではありません。
22. 「痛みの原因」ではなく「痛みの処理」へ働きかける
ここがTENSを理解するうえで重要です。
例えば、
変形性関節症
で膝が痛い場合、
TENSは、
軟骨の変形そのものを元に戻す
治療ではありません。
一方、
疼痛入力
を調節することで、
痛みの感じ方
を軽減し、
動作
を行いやすくする可能性があります。
23. 痛みが軽くなった後が重要
TENSで、
痛みが3割減った
とします。
そこで治療を終了するのではなく、
関節可動域訓練
筋力訓練
歩行訓練
などを行うことで、
身体機能の回復へつなげられます。
24. TENSを「根本改善」に使う場合の考え方
TENSそのものを、
根本改善治療
と表現するのは慎重であるべきです。
TENSの主作用は、
疼痛調節
です。
根本的な問題が、
筋力不足
運動不足
関節可動域低下
姿勢・動作
などであれば、
これらへ別途介入する必要があります。
25. TENSと慢性疼痛の悪循環
慢性的な痛みでは、
痛み
↓
活動量低下
↓
筋力低下
↓
身体機能低下
↓
さらに活動しにくい
という悪循環が生じることがあります。
この場合、
TENSで一時的に疼痛が軽くなれば、
運動療法を行いやすくする
という補助的価値が生まれる可能性があります。
26. TENSの神経生理学的メリット
26-1. 分節性鎮痛
電極部位と同一または関連する脊髄分節で、
侵害受容入力
を抑制する可能性があります。
26-2. 非侵害性入力
TENSでは、
Aβ線維
などの非侵害性求心性入力を利用します。
これにより、
触覚入力
が痛みの神経処理へ影響します。
26-3. 下降性抑制
脳幹から脊髄へ向かう、
下降性疼痛抑制系
も関与する可能性があります。 (PubMed Central (PMC))
27. 「ゲートが閉じれば痛みがなくなる」のではない
ゲートコントロール理論は重要ですが、
痛み=末梢信号
という古い単純モデルではありません。
痛みには、
侵害受容
脊髄処理
脳
注意
情動
期待
などが関与します。
現在の疼痛科学では、
痛みは単なる組織損傷の大きさそのものではなく、中枢神経系で構築される複雑な知覚体験
として考えられています。
28. TENSと中枢性感作
慢性疼痛では、
中枢性感作
が関係する場合があります。
これは、
神経系が刺激に対して過敏になっている状態
を指す概念です。
TENSがこのような痛覚過敏や時間的加重などの痛覚処理に影響する可能性について研究されていますが、すべての患者で同じ反応が起こるわけではありません。2023年の系統的レビューでも、疼痛や痛覚過敏の指標に対する効果が検討されています。 (PubMed)
29. TENSの臨床評価
電気刺激を使用する場合、
「電気を流した」
だけでは評価になりません。
例えば、
疼痛NRS
関節可動域
歩行
筋力
日常生活動作
などを施術前後で比較することが重要です。
30. 痛みだけを評価しない
例えば、
施術前:
腰痛NRS 6
施術後:
腰痛NRS 4
なら疼痛は改善しています。
しかし、
前屈可動域
歩行距離
などが変化していなければ、
機能改善は別に評価する必要があります。
31. TENSを使う目的を明確にする
目的は、
疼痛を一時的に抑える
運動を行いやすくする
リハビリテーションを補助する
などです。
32. 茨木市・高槻市の整骨院でTENSを利用する意味
茨木市・高槻市で肩こりや腰痛などについて整骨院を探している場合、
「電気治療がある」
だけでは評価できません。
重要なのは、
何のために電気刺激を使うのか
です。
例えば、
痛みを調整するTENS
なのか、
筋収縮を目的とするEMS
なのか、
運動療法を補助するための刺激
なのかで意味は異なります。
33. 茨木あゆみ鍼灸整骨院で考える電気刺激療法
茨木あゆみ鍼灸整骨院で電気刺激療法を活用する場合も、
電気を流すこと
を治療のゴールにするのではなく、
疼痛評価
↓
神経・筋機能評価
↓
必要な電気刺激
↓
再評価
↓
運動療法・セルフケア
という流れで位置づけることが重要です。
実際に使用する機器、波形、刺激条件、適応は、施設の設備および個々の患者の状態によって異なります。
34. EMS治療との実際的な使い分け
例えば、
痛みが強くて動けない
→ TENSによる疼痛調整を検討
筋肉をうまく収縮させられない
→ EMSを検討
痛みが改善して運動できるようになった
→ 自発運動・筋力訓練へ
という考え方があります。
もちろん、これは疾患や状態によって変更されます。
35. 腰痛への応用例
慢性腰痛
↓
疼痛により活動量低下
↓
TENSで疼痛を調整
↓
歩行・体幹運動
↓
筋力・持久力改善
という流れです。
ここで重要なのは、
TENSが腰痛の原因を除去した
とは限らないことです。
36. 肩こりへの応用例
デスクワーク
↓
長時間同一姿勢
↓
頸肩部の負担
↓
痛み・不快感
↓
TENS
↓
疼痛低下
↓
胸椎・肩甲骨運動
↓
作業環境改善
という包括的な流れを考えます。
37. 膝痛への応用例
膝痛の場合、
TENS
↓
疼痛軽減
↓
膝関節運動
↓
大腿四頭筋トレーニング
という流れを取ることがあります。
さらに必要に応じて、
EMS
を補助的に利用することも考えられます。
38. スポーツ障害への応用
例えば、
膝蓋腱周囲痛
シンスプリント
足関節周囲痛
などで、
疼痛が運動療法の妨げになっている場合、
TENSを疼痛管理の補助として位置づけることがあります。
39. TENSは「治癒促進装置」ではない
ここも重要です。
TENSの中心的な目的は、
疼痛調節
です。
したがって、
骨折を直接つなぐ
腱断裂を修復する
椎間板を元に戻す
といった治療ではありません。
40. TENSと治癒の違い
疼痛調節
と
組織修復
は別です。
痛みが軽くなっても、
組織が完全に治癒した
ことを意味しません。
逆に、
組織損傷がなくても慢性痛が存在する
こともあります。
41. TENSと「痛みの神経を麻痺させる」は違う
TENSは、
末梢神経を麻痺させる
治療ではありません。
あくまで、
神経活動を刺激し、疼痛処理を調節する
ことを目的とします。
42. TENSの安全性
適切に使用すればTENSは比較的安全な物理療法ですが、
誰にでも使用できるわけではありません。
特に重要なのが、
植込み型心臓ペースメーカー
などの電子医療機器です。
PMDAに掲載されている植込み型ペースメーカーの添付文書では、TENSなどの低周波治療器が電磁干渉によってペーシングを抑制したり、本体を非同期モードへ移行させたりする可能性が記載されています。 (PMDA情報ページ)
43. ペースメーカー使用者
ペースメーカーやICDなどの植込み型電子医療機器がある場合、
自己判断でTENSを使用しない
ことが重要です。
TENSと植込み機器の組み合わせについては、PMDA資料で具体的な相互作用が注意されています。 (PMDA情報ページ)
44. 感覚障害がある場合
TENSでは、
刺激が強すぎる
と皮膚障害のリスクがあります。
感覚が低下している場合、
**「刺激が強い」
**「熱い」
といった異常を本人が認識しにくくなる可能性があります。
45. 皮膚状態
電極部位に、
皮膚炎
創傷
強い発赤
などがある場合には適応を慎重に判断する必要があります。
46. 電極をどこに貼るのか
TENSでは、
電極配置
も重要です。
例えば、
痛みの周囲
関連皮節
末梢神経走行
などを考えて配置する場合があります。
また、遠隔部位での鎮痛効果も研究されており、同側・対側・関連脊髄分節外の部位などへの刺激で鎮痛効果が生じる可能性が報告されています。 (PubMed)
47. 「痛い場所に貼ればいい」とは限らない
神経生理学的には、
疼痛部位
だけではなく、
神経支配領域
脊髄分節
感覚入力
などを考慮することがあります。
48. TENSの電極配置と個別性
患者によって、
痛みの部位
神経支配
皮膚感覚
筋緊張
などが異なります。
そのため、
全員に同じ位置
という方法には限界があります。
49. TENSが効きにくい場合
TENSを使っても、
痛みが変わらない
ことはあります。
考えられる理由として、
刺激条件
電極位置
疼痛メカニズム
疾患特性
などがあります。
50. TENSが効いたから病名が分かるわけではない
これは非常に重要です。
TENSで腰痛が軽くなったとしても、
「筋膜性腰痛だった」
とは診断できません。
逆に、
TENSが効かなかったから神経痛だった
とも限りません。
治療反応は診断検査とは異なるからです。
51. TENSとプラセボ
電気刺激療法では、
治療への期待
安心感
施術者との信頼関係
なども疼痛知覚へ影響する可能性があります。
これは、
「TENSは偽物」
という意味ではありません。
疼痛はもともと、
神経生理学
と
心理社会的要因
の両方から影響を受けるからです。
52. TENS研究の限界
TENS研究では、
刺激周波数
パルス幅
強度
治療時間
治療回数
電極配置
が研究ごとに違います。
そのため、
「TENSは何Hzなら必ず効く」
といった万能な設定を決めることは困難です。
53. 2026年時点の科学的理解
現在のTENSについては、
①Aβ線維を含む感覚神経を刺激する
②脊髄後角で侵害受容入力を抑制する
③下降性疼痛抑制系へ影響する
④内因性オピオイドなどの神経化学的機構が関与する可能性がある
という複数の作用機序が考えられています。 (PubMed Central (PMC))
54. ただし「ゲート理論だけでは不十分」
現在では、
Gate Control Theory
は、
TENSの完全な作用機序
ではなく、
疼痛調節を理解するための重要な基礎モデル
として位置づける方が適切です。
現代の神経科学では、
脊髄
脳幹
視床
大脳皮質
内因性鎮痛系
などを含む複雑なネットワークが関与すると考えられています。 (PubMed Central (PMC))
55. 「神経伝達を止める」のではなく「神経処理を変える」
この表現が最も重要です。
TENSは、
電気刺激
によって、
感覚神経活動
を変化させます。
その結果、
脊髄
脳幹
大脳
などで、
痛みに関係する神経処理
が変化する可能性があります。
56. 整骨院におけるTENSの位置づけ
整骨院では、
手技
運動療法
物理療法
などを組み合わせることがあります。
TENSは、そのうち、
疼痛管理を補助する物理療法
として理解するのが適切です。
57. TENSを活用した施術プロセス
例えば腰痛なら、
Step 1
問診
痛みの発症、部位、動作、既往歴などを確認。
Step 2
身体評価
関節可動域、筋力、姿勢、動作などを評価。
Step 3
危険な病態の確認
神経症状などのレッドフラッグを確認。
Step 4
TENS
必要に応じ疼痛調整を行う。
Step 5
再評価
痛みだけでなく動作を確認。
Step 6
運動療法
筋力・可動域・協調性を改善。
この流れでTENSを「目的」ではなく「手段」として位置づけます。
58. EMS治療を加える場合
筋力低下が明確な場合は、
EMS
を補助的に利用する場合があります。
例えば、
膝痛
↓
大腿四頭筋を十分に使えない
↓
EMSで筋収縮を補助
↓
自発運動
↓
筋力トレーニング
という考え方です。
59. 矯正治療を加える場合
関節可動域や運動パターンに課題がある場合、
矯正治療
などの徒手的アプローチを検討します。
ただし、
TENS+矯正=必ず根本改善
とは限りません。
60. 鍼灸を加える場合
疼痛管理を目的として、
鍼灸
円皮鍼
などを組み合わせる場合があります。
ただし、それぞれ作用機序が異なるため、
「電気治療の一種」
として一括りにするべきではありません。
61. 「痛みを下げて運動する」という考え方
慢性疼痛のリハビリテーションでは、
疼痛
そのものが運動の障害になることがあります。
そこで、
TENSで痛みを調整
↓
動きやすくなる
↓
運動療法
↓
身体機能改善
という流れを作ります。
62. TENSと根本改善の関係
TENSを「根本改善」と表現するなら、
痛みの原因そのものを直接除去する
という意味ではなく、
痛みを調整して機能回復を可能にし、その後の運動療法や生活習慣改善につなげる
という意味で考える必要があります。
63. 患者が知っておくべきポイント
TENSを受ける際には、
「電気を流せば治る」
という理解より、
「痛みを調整するための補助的手段」
と考える方が適切です。
64. FAQ|TENS・Aβ線維・ゲートコントロール
Q1. TENSはAβ線維を刺激しますか?
一般的なTENSでは、皮膚の大径有髄感覚神経、特にAβ線維を刺激することが鎮痛機序の一つとして考えられています。これによって脊髄後角での侵害受容入力が抑制されるというゲートコントロール機構が古典的な説明です。 (PubMed Central (PMC))
Q2. ゲートコントロール理論とは何ですか?
脊髄後角において、触覚などを伝える大径線維からの入力が、Aδ線維やC線維などによる侵害受容入力の伝達を抑制するという疼痛調節モデルです。1965年にMelzackとWallによって提唱されました。 (PubMed Central (PMC))
Q3. TENSは痛みの神経をブロックするのですか?
完全に遮断するわけではありません。TENSは感覚神経を刺激し、脊髄後角や下降性疼痛調節系などの神経回路を介して、侵害受容情報の伝達や疼痛知覚を抑制・変調すると考えられています。 (PubMed Central (PMC))
Q4. TENSとEMS治療は同じですか?
異なります。TENSは主に感覚神経への刺激による疼痛調節を目的とし、EMSは運動神経を刺激して筋収縮を起こし、筋機能の改善を補助する目的で使用されます。
Q5. TENSは腰痛に効きますか?
腰痛に対する効果は研究されていますが、すべての腰痛に一様な効果があるわけではありません。慢性腰痛の過去のCochraneレビューでは十分に確実な有効性を示す証拠が乏しいと評価されました。一方、より広い慢性筋骨格系疼痛を対象としたレビューでは疼痛低下を支持する結果もあります。 (PubMed)
Q6. TENSは肩こりにも使えますか?
症状や原因によっては疼痛調整の補助手段として使用できます。ただし、肩こりは頸椎、肩甲骨、胸椎、筋機能、姿勢、仕事環境など複数の要因が関係するため、TENSだけですべてを解決できるとは限りません。
Q7. TENSは筋肉を鍛えられますか?
TENSの主目的は疼痛調節です。筋収縮・筋力向上を主目的とする場合はEMSなど、運動神経・筋を対象とした電気刺激が使われることがあります。
Q8. TENSは痛いほど強くした方が効きますか?
必ずしもそうではありません。TENSでは、目的に応じて感覚レベルや運動閾値などを考慮して刺激強度を設定します。単純に「痛いほど効果が高い」とは言えません。
Q9. ペースメーカーがあってもTENSを受けられますか?
自己判断で使用すべきではありません。PMDA掲載のペースメーカー添付文書では、TENSなどの低周波治療器が電磁干渉によってペーシングに影響する可能性が記載されています。植込み型医療機器がある場合は、担当医療機関と治療者による確認が必要です。 (PMDA情報ページ)
Q10. TENSを受けて痛みが減ったら、患部は治ったと考えてよいですか?
いいえ。TENSによる鎮痛は、痛みの神経処理を調節する作用を意味する場合があり、組織損傷が完全に治癒したことを直接示すものではありません。
Q11. TENSで痛みが取れなかった場合、神経痛ではありませんか?
そのようには判断できません。TENSへの反応は診断検査ではなく、刺激条件、電極配置、痛みの機序など複数の要素によって変化します。
Q12. TENSと鍼灸を組み合わせることはできますか?
目的と状態によっては併用されることがあります。TENSと鍼灸は刺激方法や作用機序が異なるため、それぞれの目的を明確にして使用することが重要です。
65. まとめ|TENSは「痛みを切る」のではなく、痛みを調節する神経生理学的アプローチ
TENSは、
経皮的に末梢感覚神経を刺激する電気刺激療法
です。
古典的には、
Aβ線維
↓
脊髄後角
↓
抑制性介在ニューロン
↓
Aδ・C線維からの侵害受容入力を抑制
という、
ゲートコントロール理論
によって説明されます。 (PubMed Central (PMC))
しかし、現在の疼痛科学では、TENSの効果をゲートコントロールだけで説明することはできません。
実際には、
脊髄分節性抑制
下降性疼痛抑制
内因性オピオイド
GABA
セロトニン
など、多数の神経生理学的機構が関与すると考えられています。 (PubMed Central (PMC))
また、
「TENS=痛覚神経を完全にブロックする」
という説明も正確ではありません。
より適切なのは、
TENSによって非侵害性の感覚入力を増やし、脊髄・脳幹・中枢神経系における疼痛処理を抑制または変調する
という理解です。
臨床的には、
TENSで疼痛を調整する
↓
動作を行いやすくする
↓
運動療法を実施する
↓
筋力・可動域・協調性を改善する
という使い方に意味があります。
つまり、
TENSそのものをゴールにするのではなく、疼痛によって制限されている機能回復を進めるための補助的手段として利用する
という考え方が重要です。
肩こりや腰痛に対しても、
TENSだけで根本改善する
と単純化するのではなく、
疼痛
関節可動域
筋力
姿勢
運動パターン
生活習慣
などを総合して考える必要があります。
茨木市・高槻市で整骨院を検討する際も、
「電気治療があるか」だけではなく、
TENSなのかEMSなのか
何を目的として使用するのか
施術後に何を再評価するのか
運動療法やセルフケアにつなげるのか
という点を確認することが、電気刺激療法を適切に理解するうえで重要です。
茨木あゆみ鍼灸整骨院で電気刺激療法を活用する場合も、TENS・EMS・手技・鍼灸・矯正治療などを同一視せず、それぞれの作用機序と目的を明確にしたうえで、身体機能の回復へつなげるという考え方が重要になります。
66. 調査した理由
今回のテーマでは、
「TENSはAβ線維を刺激する」
という比較的確立した生理学的説明と、
「Aβ線維を刺激すれば痛みの神経が完全にブロックされる」
という過度に単純化された説明を区別する必要がありました。
そのため、
- Aβ線維と脊髄後角の関係
- ゲートコントロール理論
- 現代のTENS作用機序
- 下降性疼痛抑制系
- 臨床研究におけるTENSの有効性
- 日本の医療機器資料における安全性上の注意
を別々に確認しました。
67. 調査した事実
TENSの古典的な作用機序として、Aβ線維などの大径有髄線維を刺激し、脊髄後角での侵害受容入力を抑制するゲートコントロール機構が広く説明されています。 (PubMed Central (PMC))
現在の研究では、TENSの作用は脊髄分節性抑制だけではなく、下降性疼痛抑制系や内因性オピオイドなどを含む複数の機序によって説明されています。 (PubMed Central (PMC))
TENSの臨床効果については研究結果が一様ではなく、大規模なレビュー群の包括的評価では、有効性を示す研究と不明確な研究の双方が存在します。 (PubMed)
2023年の系統的レビュー・メタ解析でも、慢性筋骨格系疼痛などにおける疼痛強度や痛覚過敏への影響が研究されていますが、すべての疼痛指標で一貫した結果が得られたわけではありません。 (PubMed)
PMDA掲載資料では、TENSなどの低周波治療器について、ペースメーカーなどの植込み型電子医療機器との電磁干渉が注意されています。 (PMDA情報ページ)
68. 本記事における考察
以上から、TENSは、
「Aβ線維を利用して脊髄・中枢神経系の疼痛調節機構へ働きかける、科学的背景を持つ疼痛管理手段」
と評価するのが適切です。
一方、
「Aβ線維を刺激すれば痛みが完全に遮断される」
とは言えません。
また、
「TENSを使えば腰痛や肩こりの原因が根本的に治る」
とも言えません。
TENSの臨床的な価値は、
疼痛を調整する
↓
動きやすくする
↓
リハビリテーションを進める
という形で最大限活かされる可能性があります。
したがって、現代的な整骨院での電気刺激療法は、
TENSによる神経生理学的疼痛調節
EMSによる筋刺激
徒手療法による関節・軟部組織への介入
鍼灸による感覚入力
運動療法による機能回復
をそれぞれ区別し、
「なぜこの刺激を、この患者、この段階で使うのか」
を明確にすることが重要です。
69. 情報の信頼性
TENSがAβ線維などの大径感覚神経を刺激する:高
ゲートコントロールを含むTENSの基本的な神経生理学的説明として、複数のレビューで支持されています。 (PubMed Central (PMC))
脊髄後角における分節性抑制:高~中
TENSの古典的な機序として確立度は高い一方、現在はこれだけでは作用全体を説明できないと考えられています。 (PubMed Central (PMC))
下降性疼痛抑制や内因性オピオイドの関与:中~高
複数の実験・レビューによって支持されていますが、刺激条件や疾患によって寄与の程度は異なると考えられます。 (PubMed Central (PMC))
TENSの臨床的鎮痛効果:中
慢性筋骨格系疼痛を含め有効性を示す研究がある一方、研究方法・刺激条件の異質性が大きく、すべての疼痛に一律に有効とは言えません。 (PubMed)
慢性腰痛への効果:中~低
過去のCochraneレビューでは十分なエビデンスが乏しいとされる一方、その後も研究が蓄積しており、疾患・刺激条件による差を考慮する必要があります。 (PubMed)
「TENSが痛みを完全にブロックする」:低
ゲートコントロールは疼痛調節の一部を説明するモデルであり、現代的な疼痛生理学では脊髄・脳幹・大脳など複数レベルでの調節が存在します。 (PubMed Central (PMC))
ペースメーカーなどとの併用安全性:高
PMDA掲載の医療機器資料で、TENSなどによる電磁干渉への注意が明記されています。 (PMDA情報ページ)
総合的な情報信頼性:高~中
神経生理学的機序についてはレビュー・解説論文を中心に、臨床効果については系統的レビュー・メタ解析を優先し、日本国内での電気刺激療法の安全性についてはPMDA資料を確認して整理しています。特に、「ゲートコントロール理論=TENSのすべての作用機序ではない」ことと、「鎮痛=病態そのものが治癒したことではない」ことを明確に区別しています。
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茨木あゆみ鍼灸整骨院では、12年以上の豊富な臨床経験に基づく確かな技術で、皆様のお身体をサポートいたします。
無理な姿勢矯正を強要せず、骨格矯正をベースにしたアプローチで、痛まない身体づくりへの体質改善が期待できます。

